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 研究内容

 

 1.培養型プレーナーパッチクランプの開発

 筋委縮側索硬化症(ALS)やアルツハイマーなどの神経疾患は原因不明で決定的な治療法も不明という難病中の難病である。ALSについては、SOD1, TDP43, FUS, DAO, ADAR2などの変異たんぱく質の関与が明らかとなりこれらのたんぱく質を遺伝子操作したモデルマウスも開発されているが、必ずしも疾患を忠実に反映していないため疾患の原因解明や治療法の開発に十分なモデルとなっていない。

 

 In vitro 神経細胞ネットワークはiPS細胞技術の出現により、疾患モデル構築という観点から特別な重要性を帯びることとなった。すなわち患者の体細胞からその患者の神経細胞に分化することにより、患者固有の神経細胞ネットワークを構築することが可能であり、現在まだそのようにして作成した神経細胞ネットワークが疾患とどのように関係しているかは不明であるが、マウスでは不可能な、より忠実な疾患モデルを構築できる可能性を秘めている。

 

 

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1-1.ピペットパッチクランプ法

1-2. 多チャンネルプレーナーパッチクランプ

 

                 ピペットパッチクランプ(図1-1)は、神経細胞の情報伝達を担うイオンチャンネルを流れる電流を計測でき、神経細胞の機能を最も精密に解析できる技術として知られているが、多点同時計測ができない。 多点同時計測の可能な計測手法として、プレーナーパッチクランプ法(1-2)が開発されたが、これは培養機能を必要とする神経細胞のイオンチャンネルの計測には使用できなかった。培養機能を付与するため、基板表面に細胞外マトリックスを塗布すると、シール抵抗が低下し、雑音が極端に大きくなるためである。我々は、シール抵抗が低くても計測可能な方法の開発に成功し、培養型プレーナーオパッチクランプの開発に成功した(図1-3

 

 

1-3. (a)培養型プレーナーパッチクランプの概念図、(b)塩橋型安定電極、(c)培養型プレーナーパッチクランプで通常の電極を用いると非常に大きなベースラインノイズであるが、塩橋型安定電極を用いるとノイズが大幅に低減することを発見。(Colloid & Surface B, 116 (2014) 193-200. (DOI 10.1016/j.colsurfb.2013.12.055)

2. 神経細胞ネットワーク構造の制御

 

 プレーナーパッチクランプでは標的細胞を基板のチャンネル電流計測用の微細貫通穴の上に長期間設置する必要がある。神経細胞ネットワークの場合、細胞が遊走現象を有するため、微細貫通穴の上に留め置き、かつ、軸索や樹状突起は自由に近くの他の細胞のところに伸長できシナプスを形成する必要がある。我々は、この条件を満たして神経細胞ネットワークを形成できるセルケージ基板を開発した(2-1)。これにより、ピペットパッチクランプ並みの品質のイオンチャンネル電流を計測することに成功した(バイオマテリアル36, 208-213 (2018))。

 

 

2-1 セルケージ基板の断面図(a)。チャンネル電流計測のための微細貫通穴の周りを小さい円柱からなる柵(ケージ)で囲う(b)。細胞体は穴の上に固定した状態で樹状突起や軸索はケージの隙間から自由に外に伸び、ケージの外の神経細胞とネットワークを形成する。

 

 

 

 

 

この基板製作にはSiSOI基板を用い、図2-2に示すようなボッシュプロセスを中心とする、ホトリソグラフィとエッチング加工を繰り返す工程を開発した(図2-2)。この工程を実施するにおいては、名古屋大学及び、分子科学研究所のナノプラットフォーム事業に大変お世話になっており感謝する次第である。

 

 

 

 

2-2. セルケージ基板の製作工程

 

 

2-3. セルケージ内に細胞を固定して培養した神経細胞。樹状突起や軸索は自由にケージの外に伸長する

 

3. 疾患モデル神経細胞ネットワークにおいて多点同時計測を必要とする理由。

 

 

神経細胞にはたくさんのイオンチャンネルがあって、ネットワークの機能を制御している。

 

 

3-1 C9ORF72遺伝子に変異のあるALSの患者のiPS細胞から作った神経細胞ネットワークでポタジウム(K)イオンチャンネルの破損が見つかった

 

 

 

このような遺伝子変異や部品の破損はネットワーク全体でどのように分布しており、病気の進行とともにどのように変化するのか。 他の部品にも異常はないのかなど、詳細が分かれば病気の原因を追究できる。 私たちの開発した装置は世界で初めてそれを可能にする。

現在、開発した装置の実用化を目指し、その一歩として4チャンネルからなるプロトタイプ機の製作を進めている(3-2)

 

 

 

 

 

 

3-2. プロトタイプ機の設計図と素子の図